観心本尊抄 本文ふりがな付② p239


如来滅後にょらいめつご  五百歳ごひゃくさいに はじむ 観心かんじんの 本尊抄ほんぞんしょう

 

 

p239

 

為すなす

 

乃ちすなわち 是れこれ 終窮しゅうぐ 究竟のくきょうの 極説ごくせつ なりあなり

 

故にゆえに 序のじょの 中になかに 「説己せつこ 心中しんちゅう 所行しょぎょう 法門とほうもんと」 云ういう

 

良にまことに 以所ゆえ 有るなりあるなり

 

請うこう、 尋ねたずね 読まん者よまんもの、 心にこころに 異縁いえん 無れなかれ。」とう 云云うんぬん

 

夫れそれ 智者のちしゃの 弘法ぐほう 三十年さんじゅうねん

 

二十九年のにじゅうきゅうねんの 間はあいだは 玄文げんもん 等のとうの 諸義をしょぎを 説いてといて

五時ごじ 八教はっきょう百界千如をひゃっかいせんにょを 明かしあかし

 

前きさき 五百余年のごひゃくよねんの 間のあいだの 諸非をしょひを 責めせめ

並びにならびに 天竺のてんじくの 論師ろんし 未だいまだ 述べざるをのべざるを 顕すあらわす

 

章安大師しょうあんだいし 云くいわく 「天竺のてんじんの 大論だいろん なお 其のその 類にたぐいに 非ずあらず

震旦のしんたんの 人師にんし 何ぞなんぞ 労わしくわずらわしく 語るにかたるに 及ばんおよばん

此れこれ 誇耀にこように 非ずあらず 法相のほっそうの 然らしむるのみしからしむるのみ」 とう 云云うんぬん

 

墓ないかなはかないかな

天台のてんだいの 末学等まつがくら

華厳けごん真言のしんごんの 元祖のがんそ 盗人にぬすびとに

一念三千のいちねんさんぜんの 重宝をじゅうほうを 盗みぬすみ 取られてとられて

還つてかえって 彼等がかれらが 門家ともんけと 成りぬなりぬ

 

章安大師しょうあんだいし 兼ねてかねて

此のこの 事をことを 知つてしって 歎いてなげいて 言くいわく

斯のこの ことば 若しもし 墜ちなばおちなば

将来しょうらい 悲むかなしむ 可しべし」 云云うんぬん

 

問うてとうて 曰くいわく

百界千如とひゃっかいせんにょと 一念三千といちねんさんぜんと 差別さべつ 如何いかん

 

答えてこたえて 曰くいわく

百界千如はひゃっかいせんにょは 有情界にうじょうかいに 限りかぎり

一念三千はいちねんさんぜんは 情非情にじょうひじょうに 亘るわたる

 

不審してふしんして 云くいわく

非情にひじょうに 十如是じゅうにょぜ 亘るならばわたるならば

草木にそうもくに こころ 有つてあって 有情のうじょうの 如くごとく

成仏をじょうぶつを 為すなす 可きやべきや、 如何いかん

 

答えてこたえて 曰くいわく

此のこの こと 難信難解なりなんしんなんげなり

 

天台のてんだいの 難信難解になんしんなんげに  有りあり

一にはいちには、 教門のきょうもんの 難信難解なんしんなんげ

二にはにには、 観門のかんもんの 難信難解なりなんしんなんげなり

 

其のその 教門のきょうもんの 難信難解とはなんしんなんげとは

一仏のいちぶつの 所説にしょせつに 於ておいて

爾前のにぜんの 諸経にはしょきょうには 二乗にじょう闡提せんだい

未来にみらいに 永くながく 成仏せずじょうぶつせず

教主釈尊はきょうしゅしゃくそんは 始めてはじめて 正覚をしょうかくを 成ずじょうず

 

法華経ほけきょう 迹本しゃくほん 二門ににもんに 来至しらいしし 給いたまい

彼のかの 二説をにせつを 壊るやぶる

 

一仏いちぶつ 二言にごん 水火なりすいかなり

誰人かたれびとか 之をこれを 信ぜんしんぜん

此れはこれは 教門のきょうもんの 難信難解なりなんしんなんげなり

 

観門のかんもんの 難信難解はなんしんなんげは

百界千如ひゃっかいせんにょ 一念三千いちねんさんぜん

非情のひじょうの 上のうえの 色心のしきしんの 二法にほう 十如是じゅうにょぜ、 是なりこれなり

 

爾りとしかりと 雖もいえども 木画のもくえの 二像ににぞうに 於てはおいては

外典げてん 内典ないてん 共にともに

之をこれを 許してゆるして 本尊とほんぞんと 為すなす

 

其のその 義にぎに 於てはおいては

天台てんだい 一家よりいっけより 出でたりいでたり

 

草木のそうもくの 上にうえに 色心のしきしんの 因果をいんがを 置かずんばおかずんば

木画のもくえの 像をぞうを 本尊にほんぞんに 恃みたのみ 奉ることたてまつること 無益なりむやくなり

 

疑つてうたがって 云くいわく

草木そうもく 国土のこくどの 上のうえの 十如是のじゅうにょぜの 因果のいんがの 二法はにほうは

何れのいずれの 文にもんに 出でたるやいでたるや

 

答えてこたえて 曰くいわく止観しかん 第五にだいごに 云くいわく

国土世間こくどせけん また 十種のじゅっしゅの 法をほうを 具すぐす

所以にゆえに、 悪国土あっこくどそうしょうたいりき とう」 と云云とうんぬん

 

釈籤しゃくせん 第六にだいろくに 云くいわく

相はそうは ただ 色にいろに 在りあり

性はしょうは ただ 心にこころに 在りあり

たいりき縁はえんは 、 色心をしきしんを 兼ねかね

因果はいんがは ただ しん

報はほうは ただ 色にしきに 在りあり」 とう 云云うんぬん

 

金錍論にこんぺいろんに 云くいわく

乃ちすなわち 是れこれ一草いっそう一木いちもく一礫いちりゃく一塵いちじん

おのおの 一仏性いちぶっしょうおのおの 一因果ありいちいんがあり

えん 了をりょうを 具足すぐそくす」 とう 云云うんぬん

 

 

 

 

※読みやすくするために、文字の間を空けたり、句読点(。)や濁点(、)、カッコ(「」)をあえてつけています。